サマー・ファイト・シリーズ終盤戦に特別参加したタイガーマスク。その様子は、東京スポーツでつぶさに報じられています。

まずは、初戦となった7月31日のスコルピオ戦。このスコルピオという選手はこれが初来日。タイガー同様、この日からの特別参加で、まさにタイガーのための対戦相手として招聘されたことが分かります。

タイガーは、このシリーズ中に6戦(シングル5戦、タッグ1戦)を行いますが、スコルピオとは実に4回(シングル3戦、タッグ1戦)戦っています。

そのシングル3連戦の初戦となった大阪大会、この日はテレビ生中継でしたが、残念ながらタイガーの試合はオンエアされていません。

シリーズの目玉となるタイガーの試合をオンエアしないとは何だかもったいない気もしますが、スコルピオの実力が未知数で、タイガーとどこまで手が合うのか不安があったため、オンエアには乗らないであろう位置に試合の順番を持ってきたのかも知れません。

しかし、これは結果としてタイガーにとっては吉と出たと思われます。

試合は両者リングアウトの引き分けとなります。

東京スポーツ 81年8月2日号

もちろん引き分けも負けにはなりませんが、「勝てなかった」という点ではマイナスイメージになりかねません。

当時は、プロレスが金曜夜8時という時間帯に放映されており、チャンネルをひねっていれば(この表現がもう古いですよね)興味が無い人の目にも入ってくるということもあり、プロレスが今よりもっと大衆娯楽として多くの人々に認識されていたと思います。

余談ですが、当時、小学生だった私たちの土曜日の学校(昔、土曜日は半ドンで午前中は学校がありました)での話題は「昨夜のプロレス見た?」でした。中にはいつもプロレスの話題に入ってこない女子が「昨日、プロレスやってたよね。つい、見ちゃった。」なんて話してくることもありました。

その視聴者の大半はテレビから得る情報がすべてで、毎週のテレビを見ていれば、シリーズの流れを理解し、十分楽しめたと記憶しています。そのためもあって、新聞や専門誌などを購入していない一般のファンが占める割合も多く、タイガーが引き分けたということは、ほとんどの人は知らなかったと思います。

これから売り出していこうというタイガーが、早速「勝てなかった」となると、「なーんだ、大したことないじゃん。」となり、これから続くタイガーの不敗神話にミソを付けることに成りかねなかったスコルピオ戦。それが全国放送のオンエアに乗らなかったことは、結果としては良かったのかも知れません。

ちなみに同じ日の東京スポーツに、8月6日の蔵前大会の告知がされています。

京スポーツ 81年8月2日号