10月8日の蔵前大会は、翌9日のワールドプロレスリングにて録画中継されています。
この日は「創立10周年記念第3弾」としてビッグマッチが組まれており、タイガーvsマスク・ド・ハリケーンの覆面はぎマッチも目玉カードの一つとなっています。
テレビ中継は、まず、タイガーマスクの入場シーンから始まります。実況は保坂正紀アナ。タイガーがコーナーに立ったところでストップモーションとなり、「SUPER・IDOL タイガー・マスク」のテロップが入ります。
そしてセレモニーをカットし、ハリケーンとタイガーのコールを放送。レフェリーのチェックの場面で画面が切り替わり、5分経過のテロップが出ます。
タイガーの足に自分の足を絡めながら、タイガーを倒そうとしたハリケーンの足を、タイガーが切り返すところから始まります。
グラウンドでお互いに足を取り合う中、スタンディング状態になり、タイガーがキックを見舞い、試合が動きます。
ロープに走った相手に対して、自らロープの反動を利用してカウンターで背面トペ気味のエルボーパットをタイガーが決めると、ハリケーンも同じ技で切り返します。
しかし、タイガーはそれを受け流し、ドロップキックの4連発から、ケブラ・ドーラ・コン・ヒーロ(風車式バックブリーカー)を決めてフィニッシュ。技を受けた瞬間、ハリケーンは断末魔の悲鳴を上げます。
試合後、「マスクを取れ」といったジェスチャーを見せたり、マスクを取ったハリケーンの素顔を見られぬようにクロネコが覆ったタオルをタイガーが奪い取ったりと、ちょっとタイガーのヒールチックな動きが見られます。
最後はリーがタイガーの手を上げた清々しい場面で終わります。
ハリケーンの素顔が見えたとき、解説の桜井康雄氏が「ボビー・リーですね」と言っているのを聞いて、当時小学生だった私は、「なぜ素顔を知られていないマスクマンなのに、顔を見ただけでなぜ分かったのだろう?」と思っていました。
しかし、ボビー・リーは以前はマスクマンの「ボビー・リー」として戦っており(そのときのマスクもハリケーンのマスクと基本同じデザインで、両目の下に「LEE」という文字が入っているものでした)、メキシコで「マスカラ・コントラ・マスカラ」で敗れ、マスクを脱いで、素顔の「ボビー・リー」として戦っていたそうです。それを新日本プロレスからの要請で「マスクド・ハリケーン」なるマスクマンに変身し、来日したのです。
このことは、当時の専門紙には書かれており、マニアックなファンは分かっていたかも知れませんが、私のような一般ファンには「?」だったと思われます。
ボビー・リーは、タイガーが素顔のメキシコ修行時代に、そのファイトを見て「僕もああいう選手になりたい。」と言ったほどの、寝て良し、跳んで良しのオールラウンドプレイヤーだったそうです。
しかし、ボビー・リーはこの来日前に、選手生命に関わる大ケガを背骨にしており、まともに試合ができる状態ではなかったそうで、痛み止めの注射を打って試合に臨んだのですが、「持って5分」と言われ、試合中も背骨の痛みで十分に力を発揮できなかったということです。
市販DVDでは、テレビ中継でカットされた試合の序盤5分間の攻防を見ることができます。
スタンドでの関節の取り合いから始まり、タイガーはタイガースピンでハリケーンを倒しますが、なぜかハリケーンは前方では無く、後方に倒れ込みます。その後はグウンドでの攻防が続きますが、フェイスロックに決められたハリケーンはタイガーの指に噛みつき脱出を試みます。
ハリケーンのヒールチックな動きをはさんで再び関節の取り合い、グラウンドでの攻防が続きますが、ヘッドシザースから脱出したタイガーがローリング・ソバットを見せると、ハリケーンはダウン。しかし、ハリケーンが、ニップアップを3回繰り返して自分の動きをアピールしますが、タイガーはそれに付き合わず、タックルからドロップキックを見舞います。
ここまでが、テレビ中継でオンエアされなかった5分間。特段、ハリケーンの動きが悪かったわけではありませんでした。
しかし、テレビのオンエアに乗った後の、やや唐突とも言えるフィニッシュは、このハリケーンの背骨の状態を察したタイガーが試合を早めに終わらせたのかも知れません。