10月22日のワールドプロレスリングは広島県立体育館より実況生中継。タイガーはセミファイナルでレス・ソントンとのNWA世界ジュニアヘビー級タイトルの防衛戦を予定していましたが、ソントンのウェートオーバーによりノンタイトルに変更。セミ前では、開幕戦で壮絶な仲間割れを起こした藤波辰巳と長州力の因縁の一戦が行われています。

82年10月22日 広島大会

THE WRESTLER Vol.12

注目の藤波vs長州は、2人が感情をむき出しにして大荒れの試合に。最後は両者流血によるノーコンテストで決着は11・4蔵前大会に持ち越し、遺恨が残る試合となりました。

場内の興奮が覚めやらぬ中、先ずはソントンが入場。

続いて「燃えろ!吠えろ!タイガーマスク」に乗りタイガーが入場。お馴染みのコーナーポストに上ってポーズをとった瞬間…

10・26大阪大会でタイガーとのタイトルマッチが決定している小林邦昭がリング下からタイガーのマントを引っ張るという暴挙に出ます。

体勢を崩したタイガーはリング内に転落。

小林はそのままリング内に飛び込んで、タイガーに攻撃を加えていきます。

余談ですが、小林の乱入を傍目に、冷静にタイガーのマントを拾い上げ、折り畳んでセコンドに渡すというソントンの姿がやや滑稽に見えます(苦笑)

不意を突かれたタイガーは思わずダウン。

息を吹き返したタイガーは怒りの形相で小林に殴りかかり、ローリング・ソバットを見せますが、小林もキックの連打で反撃!

ドロップキックで再びタイガーをダウンさせます。

セコンドに制され小林は控え室に戻されますが、タイガーはダウンしたまま。

ダメージの大きいタイガーは、セコンドによって抱き起こされようやく立ち上がりますが、試合が正常に行われるのか心配になります。

その中で両選手のコールが行われますが、

ダメージの残るタイガーは右手を挙げますがうつむいたまま。そのまま一旦CMに入ります。

CM明け、タイガーがキックとソントンのパンチによる攻防から始まります。

ソントンのボストンクラブをタイガーが脚の力で返すとソントンは場外に転落。

アームロックにとられたタイガーは、ヘッドシザース・ホイップを狙いますが、ソントンがこれを踏ん張り、逆にタイガーをマットに叩きつけます。

アームロックを決められたまま立ち上がったところ、タイガーはバック宙で切り返し脱出、ソントンを腰投げでマットに倒します。

タイガーがツームストーン・パイルドライバーの形に入ったところ、ソントンの重さでよろけて体勢を崩してしまいますが

ロープの反動を使って体勢を整えツームストーン・パイルドライバー一閃!

トップロープからのダイビング・ヘッドバット!

ソントンが2カウントでキックアウトしたため、すかさずタイガーはソントンの背後に回りジャーマン・スープレックス・ホールドを決め勝利します。

3カウントを奪われはしましたが、ダメージの浅いソントンはスクッと立ち上がり、不満げな表情で場内にアピール。タイガーは試合前のダメージが尾を引いていたのかすぐには立ち上がれず、ようやく立ち上がったタイガーは、何やら怒りを抑えられない様子でソントンに向かってハイキック!

ダウンしたソントンのボディにキックを見舞います。

立ち上がったソントンは「やってられない」とばかりにリングを降りて控え室に戻っていきます。

タイガーの勝利で終わりましたが、今ひとつスッキリしない結果となりました。ダイナマイト・キッドやブラック・タイガーらの試合に見慣れたファンにとってはソントンのスタイルは厳しい言い方をすると鈍重で、タイガーとスイングしていたとは言えません。また、試合前の小林による奇襲でタイガーもダメージがあり、タイガーの動きもやや鈍かったように感じます。

勝った後のソントンに対するキックも、明らかにタイガーがイライラしていた様子が伝わってきたのですが、それが何によるものなのかが分からず(ソントンの不甲斐なさ?試合前の小林の乱入?)、その点も後味の悪さを感じた1つかも知れません。

しかし、長州に続く小林の正規軍(当時はこの表現はしていませんでしたが)に対する宣戦布告によって、大阪大会が俄然注目の試合になったことは確実でした。