廣済堂出版から出されていた「豆たぬきの本」。当時人気のあったプロレスに関する本も出されていましたが、この「プロレス新必殺技」もその1つです。

1978年に発刊された「プロレス必殺技」の続編ということで、初版発行日が1982年11月15日、実際の発売は9月中旬頃でしょうか。表紙にはタイガーマスクがサマーソルトキックを決めている写真が使われていることから、タイガー人気にあやかって発刊されたであろうことがうかがえます。

「飛び技」「なぐる技・蹴る技」「叩きつける技」と6つのジャンルに分けて紹介しています。





「飛び技ベスト22」として、22種類の技の中で6種類の技でタイガーの写真が使われています。

「ムーンソルト・プレス」となっていますが、ムーンソルト・プレスが後方に1回転するのに対し、当時タイガーが使っていたのは捻りを加えているので「ラウンディング・ボディ・プレス」と呼ばれているはずです。

「スペース・タイガー・アタック」となっていますが、「スペース・フライング・タイガー・ドロップ」が正式名称ですね。

「フライング・ローリング・ソバット」となっていますが、「フライング」と付けずに普通に「ローリング・ソバット」と使用していたはずです。




「なぐる技・蹴る技ベスト10」では、タイガーの写真は使われていません。

「叩きつける技ベスト22」では、タイガーの写真は1種類、タイガーのライバルであるダイナマイト・キッドの写真が1種類で使われています。




「固め技ベスト17」では、タイガーの写真は3種類で使われています。

「アバランシュ・ホールド」とありますが、アバランシュ・ホールドは相手をボディスラムに抱え上げた状態から、助走を付けて自分の体ごとマットに叩きつける技で、この写真は「フライング・ボディ・アタック」「クロス・ボディ」といった呼び方をしているはずです。

「オースイ・スープレックス」は腕の固め方や最後の決まった形こそ同じですが、実際には後方に放り投げるスープレックスでは無く、後方に倒れ込みブリッジでエビ固めに決める技で全く別物です(ただ、当時の書籍では混同されていました)。やはりここでは「タイガー・スープレックス」が正しいでしょう。




「投げ技ベスト6」でも、タイガーの写真は使われていません。

「痛めつける技ベスト23」では、タイガーの写真は1種類、タイガーのライバルであるブラック・タイガーの写真が1種類で使われています。





技の名称の間違いなどの事実誤認が多く見られるのは、小さいことにはこだわらない「昭和プロレス」といったところでしょうか。
ただ、プロレスならではのファンタジーという意味であえてフィクションを押し出しているわけでは無く、単なるミスの羅列は子供向けの内容だからと軽んじているようにも見えてしまいます。逆に子供向けだからこそ正しい情報を提供してほしいなと感じ、とても残念だなと感じてしまいました。