第2回MSGタッグリーグ戦の最中で行われた12月8日の蔵前大会は、リーグ戦の星取りとは関係の無い特別試合がラインナップされた興行となります。

81年12月8日 蔵前大会

シリーズ終盤戦に特別参加のローラン・ボックがスタン・ハンセンと組み、猪木、藤波組と対戦するタッグマッチ、アンドレ・ザ・ジャイアントとキラー・カーンのシングルマッチ、復活テキサス・アウトローズ(ダスティ・ローデス&ディック・マードック)といった特別試合と共に、タイガーはカネックとのシングルマッチが組まれます。

東京スポーツ 81年12月4日号
THE WRESTLER Vol.5

ちなみにこの日の試合は、シリーズ終了後のオフの期間である12月18日にオンエアされています。

ちなみにタッグリーグ期間中のワールド・プロレスリングの中継は、11月20日 志木大会(生中継)、11月27日 徳島大会(生中継)、12月4日 郡山大会(生中継)、12月11日 大阪大会(優勝決定戦・録画)となっていますので、タイガーの試合の放送は11月20日にオンエアされた前夜祭でのジョージ高野戦(ダイジェスト)以来、およそ1ヶ月ぶりとなります。

試合はタイガーの入場シーンから放送。タイガーが例のごとくコーナーポストに上ろうとした瞬間、カネックが奇襲を仕掛けます。

当時、週刊少年サンデー(小学館)に掲載されていた「プロレススーパースター列伝(原作:梶原一騎・作画:原田久仁信)」のタイガーマスク編では、この奇襲により、場外に転落したタイガーが足首を負傷したとなっていますが、実際は、この時点では足首の負傷はしていません。

その後もリングインしようとするタイガーに執拗な攻撃を仕掛けます。そしてタイガーがややダメージを残しながら、試合開始のゴングが鳴ります。

タイガーが空中殺法を見せると、カネックは体格差を利用したパワー殺法で攻め込みます。

途中、場外に落ちたカネックに、タイガーがエプロンから跳び蹴りを食らわせますが、その後、リングに戻ってきたタイガーが、足を痛そうに引きずる姿が確認できるため、この攻撃で着地に失敗し、足首を負傷したと見られます。

の後のタイガーは、足を引きずりながら戦うこととなり、苦戦を強いられます。

タイガーも反撃を見せますが、なかなかペースを掴めません。逆にカネックはタイガーをリフトアップして、自分のパワーをアピールするなど、憎々しいファイトを見せます。

最後は、リング外に落ちたカネックにフィンタ・レギレテからコーナーポストに駆け上がり、プランチャを決めます。

続けて、再びプランチャを決めたところ、カネックにガッチリとキャッチされ、そのまま場外戦にもつれ込み両者リングアウトの引き分けとなります。

左足首を負傷したタイガー。元日決戦のキッドとの王座決定戦に赤信号が点ることになります。

この試合、結果として黒星こそ付きませんでしたが、個人的な感想ですが、内容的としては(試合途中の足首負傷という点を差し引いても)タイガーの良さが発揮されたとは言いがたい試合でした。

確かに当時もジュニアの藤波選手がヘビー級のリーグ戦に出場したり、ハンセンなどの大型ヘビー級レスラーと対戦したりと、タイトルマッチ時こそ「ジュニア」という括りで扱われてはいましたが、普段からヘビーとジュニアとの枠を取り払ったマッチメークは行われていました。

ただ、藤波選手は(体重こそ100㎏に満たない体でしたが)、身長は公称186cmであったため、ヘビー級レスラーと並んでも身長差はそれほど感じられませんでした。

また、カネックも藤波選手の保持していたジュニアヘビーのベルトにも挑戦し、ライバルとして何度も対戦してはいましたが、地元のメキシコではヘビー級のトップレスラーとして活躍しており、公称172cmの純然たるジュニアヘビーのタイガーとの体格差は明らかです。

明らかな体格差、メキシコでのトップという立場、日本での実績から考えると、カネックとしては負けるわけにはいかず、威圧的な試合になってしまったのは仕方がないと言えるでしょう。

「タイガーの対戦相手」=「メキシカン」という発想で行ったマッチメークであったとすると、あまりにも安直すぎたと思います。事実、この後にタイガーとヘビー級のトップレスラーとのシングルマッチが組まれることは国内ではありませんでした。