この日の実況は古舘アナ。まずはキッドがビリー・コブハムの「マジック」に乗って入場してきます。

続いてタイガーマスクが「タイガーマスクⅡ世」に乗って入場してきますが、ここでタイガーは今までの顎まで覆われたマスクではなく、口の部分が大きく開いたニューマスクで入場してきます。当時、テレビ観戦をしていた私も、そのフォルムのあまりの変わりように「タイガーっぽさが無くなってしまったな」と感じたことを覚えています。

リングの上では梶原一騎氏より、タイガーマスクのブロンズ像がタイガーにプレゼントされます。そして、タイトルマッチのセレモニーが行われますが、リングサイドには歌手の水前寺清子さんが観戦しており、保坂アナによるインタビューが行われます。

両選手のコールが終わり、いざ試合開始です。

デビュー戦を彷彿させるようなステップを見せるタイガー。ロックアップで組んだ瞬間からバチバチの展開が繰り広げられます。

キッドがタイガーをサイド・スープレックスで叩きつけたところで、タイガーの左足に異変が起こります。それに気付いたキッドは徹底した左足殺しを行い、タイガーは劣勢に陥ります。途中、何とか脱出し、間合いを取るタイガーですが、再びキッドに左足を攻められ、タイガーは防戦一方になってしまいます。

キッドのブレーンバスターを切り返しバックを取ったタイガーの、更にバックを取ったキッドはものすごい角度のバックドロップでタイガーをマットに叩きつけます。

そしてデビュー戦では見せなかったツームストーン・パイルドライバーでタイガーをダウンさせたキッドはものすごい飛距離のダイビング・ヘッドバット。

あわや3カウントというところでしたが、「まだまだ終わらせないぜ」とばかりにキッド自らタイガーを引きずり起こします。

そして2回目のツームストーンからまたもやダイビング・ヘッドバットを見せますが、これはタイガーが間一髪かわします。しかし、タイガーは反撃に出ることができません。

キッドは変形の足四の字固めで執拗にタイガーを攻め込みます。口の部分が大きく開かれたマスクに変わったことで、タイガーの苦悶の表情がよりはっきりと伝わってきます。

何とか逃れたタイガーでしたが、キッドがタイガーをコーナーに振ります。しかし、上手く切り返しキッドの突進をかわしたタイガーは、フェイントからのスクールボーイ(当時はこの名称はされていませんでした)から全体重をかけて強引に押さえ込み、3カウント!!タイガーがWWFジュニア王者となりました。

プロレスは対戦相手のウイークポイントを攻めるのが鉄則なため、キッドがタイガーの左足攻めに徹底し、タイガーが防戦一方となってしまい、華麗なる技の攻防という試合展開にならなかったのは致し方ないことでしょう。

試合展開に加え、最後も一瞬の隙を突いた返し技によるスッキリとは言い切れない勝利ということで、初のタイトル奪取となったタイガーにも不満の残る試合だったようです。

市販DVD「初代タイガーマスク~猛虎伝説~Vol1」では試合終了のところまでしか見ることができませんが、当日は生中継だったため、試合後のセレモニーまでオンエアされています。

そのセレモニーではキッドを一瞥するタイガーが映し出されますが、その表情がとても印象的でした。また、そのキッドがマイクアピールを行うと、場内から割れんばかりの「キッド!キッド!」のコールが起こります。人気者のタイガーの敵役でありながら、そのキッドの妥協しない切れ味鋭いファイトぶりに、ファンも魅了されていたということでしょう。

ちなみに、その後に放送席よりテレビ朝日より発刊された「タイガーマスク写真集」のプレゼントの告知が行われています。