2月19日のワールド・プロレスリングは、2月11日のシリーズ最終戦の蒲郡大会の模様が録画中継でオンエアされています。

タイガーは、藤波辰巳、木村健吾とトリオを結成し、ダイナマイト・キッド、ブレット・ハート、ベビー・フェース組と対戦。

THE WRESTLER Vol.6 82年2月11日 蒲郡大会

実況は古舘伊知郎アナ。先に入場したキッド組は、リング上から入場してくる日本人トリオを挑発します。

タッグマッチはゲーム性が高くなるためシングルマッチに比べると勝負論が希薄になりがちという声もありますが、普通のタッグマッチであれば1試合で2×2の4通りの、6人タッグになると9通りのシングルマッチが見られることになり、私としては得した気分になります。

まずは木村とキッドの先発で始まり、目まぐるしいタッチワークで試合が展開していきます。

場外戦を有利に進めていた木村でしたが、キッドのツームストーン・パイルドライバーからのダイビング・ヘッドバットを食らい、外人組に1本目を先取されます。

2本目は木村とキッドで始まりますが、ダメージの残る木村はなかなか反撃に出ることが出来ません。

ようやく藤波にタッチをし、日本人組が反撃に出ます。しかし、後方回転エビ固めを決めた藤波にキッドがカットに入るのですが、カット一つとってもキッドの攻めはとても厳しいです。

2本目は、トップロープからの攻撃を狙ったフェースを捕まえた木村が雪崩式ブレーンバスターを決めて1本を取り返し、1対1のイーブンとします。

解説の山本小鉄氏も「6人タッグは試合がめちゃくちゃになりがちだが、この試合は今まで見た中で最高の部類に入る」と言っているほど、見応えのある試合が展開されていきます。

勢いづいた木村はフェースを攻め込みますが、外人組も厳しい攻めで反撃に転じます。

木村がコーナーに振られるのですが、木村がコーナーマットにぶつかる寸前にそのコーナーマットをキッドがヒョイッと外します。木村はむき出しになった金具に背中を打ち、悶絶します。

こういったことを平然と行うところがキッドの魅力でしょうか。また場外ではブレーンバスターの体勢から木村の足をエプロンに叩きつけるなど、キッドはえげつない攻撃を見せます。

再び外人組に捕まった木村でしたが、ようやくタイガーにタッチ。やはりタイガーとキッドの絡みは見応えありです。

フェースも体格では藤波や木村に劣りますが、藤波にブレーンバスターを決めるなどパワーを見せます。

ロープに振られた木村がロープに跳ね返る瞬間に、コーナーに待機していたキッドがキックを入れますが、山本氏が思わず「うまい!」と声を漏らすほど絶妙なタイミングでここでもキッドの厳しい攻めが見られます。しかし、キッドもヒザにダメージを受けてしまうのですが、自分がケガをするのを厭わないキッドの姿勢が人気のもととなっていたのだと改めて感じました。

最後はハートにボディスラムを決めフォールに入った藤波に対し、キッドがダイビング・ヘッドバットでカットに入るのですが、寸前で藤波がかわしたことで同士討ちとなってしまいます。

藤波はすかさずハートにブレーンバスターを決めフォール。3本目を取り、2対1で日本人組が勝利しました。

シリーズ最終戦、主要タイトルマッチも終わり前哨戦となるわけでもなく、テレビもシリーズとシリーズの合間の録画中継と、ともすると消化試合的な無難な試合になってしまうのかなと思っていましたが、思いもかけぬ好勝負となりました。

古舘アナもしきりに「ニューウエーブプロレス」という言葉を連呼していたように、息つく暇もない、見応えのある試合だったと思います。

目まぐるしいタッチワークで試合のテンポが途切れることが無く、所々にカットや場外戦も見られましたが、ダラダラと続く乱入・乱闘で消化不良な試合なることも無く、これも6選手の技量によるものでしょう。

当時のヘビー級重視の風潮からすると「軽い」と言われるかもしれませんが、タイガーからファンになった私としては、ヘビー級の試合がやや鈍重に見えることがあり、こういった試合こそまさに「プロレスの真骨頂!」といえる試合だと思います。