7月23日のワールドプロレスリングは、金沢市の石川県産業展示館からの生中継。タイガーはダイナマイト・キッドとのシングルマッチを行いますが、タイガーのシングルマッチがメインエヴェントに行われるのは初となります。

ちなみにこのシリーズはアントニオ猪木が内臓疾患により欠場中。猪木に次ぐナンバー2として藤波辰巳が奮闘しており、この日はセミでディック・マードックとシングルマッチを行っています。

ただ、前週放送のワールドプロレスリングでは、「タイガーvsキッド」「タイガー戸口、谷津嘉章vsグレッグ・バレンタイン、リック・マグロー」「坂口征二、藤波辰巳vsマードック、アドリアン・アドニス」となっていたため、変更には何らかの事情があったのかも知れません。

この日の放送を所有していないため、オープニングから番組がどのように進んでいったかは不明ですが、後年、CS等で放送されたものは両者の入場から試合終了までノーカットでオンエアされています。また、実況の様子から見ると、当時の放送もキッドの入場シーンからオンエアされていたようです。

まずは、ビリー・コブハムの「マジック」に乗って、キッドが入場してきます。

続いて「タイガーマスクⅡ世」に乗ってタイガーが入場。

両者のコールが終わったところで、一旦CMへ。CM中は、レフェリーによるボディチェックが行われていますが、タイガーがセコンドのハートに対し何やらクレームを付けます。

ハートがエプロンから降りるところでCM明けとなり、試合開始のゴングが鳴らされます。

タイガーとキッドは見応えのある一進一退の攻防を見せます。

キッドがロープの反動を使ってタイガーを後方に叩きつけようとしたところ、これをタイガーがバック宙で切り返すと

タイガーのヘッドシザースホイップをキッドが側転で切り返すなどお互いの意地が交錯します。

試合終盤、タイガーはボディスラムからセカンドロープに跳び乗ってのエルボードロップ。

さらにブレーンバスターから、今度はトップロープからのエルボードロップを見せますがこれはキッドがかわします。

キッドはタイガーのバックを取りますが、タイガーはこれを切り返しキッドのバックを取ります。

バックの取り合いから、さらにバックを取ったキッドはものすごい角度の強烈なバックドロップ!!

さらにトップロープからのニードロップを狙ったキッドでしたがこれはタイガーがかわしたために自爆に。

タイガーはキッドの痛めた脚にキックから足四の字固めを決め一気に攻め込みます。

悶絶するキッドはロープに手を伸ばしエスケープを試みます。

キッドの伸ばす手をハートが引っ張り、更にエプロンに上ってタイガーにストンピングを浴びせます。

キッドがヘッドロックに来たところ、タイガーがエプロンに立つハートにキッドをぶつけるとハートは場外に転落。

タイガーはすかさずドロップキック!キッドも勢いで場外に転落します。

ここでタイガーはスペース・フライング・タイガー・ドロップ!!

しかしハートがキッドを庇ったためキッドはノーダメージとなり

場外でツームストーン・パイルドライバー!!

タイガーをフェンスに叩きつけ、さらに攻撃を仕掛けようとタイガーに突っ込んでいきますが

キッドの攻撃を避けたタイガーがショルダースルーの体勢でキッドを投げたため、キッドはフェンスの外へ。これによりフェンスアウトによるタイガーは反則負けに。

納得のいかないタイガーはレフェリーのミスター高橋に抗議をしますが、判定は覆りません。タイガーはデビュー以来、初のシングル黒星となってしまいました。

最終戦に(ハートとの防衛戦に勝つという前提ですが)キッドとの対戦が予定されていたため、前哨戦にタイガーvsキッドのシングルマッチが組まれたのは当然なことと言えます。

しかし、タイガーの不敗記録を続けるためにも本来なら引き分けで最終戦で決着とするところでしたが、タイガーの初黒星という結果にしたのは、当時絶対的なエースであった猪木の欠場があったと言われています。

ビッグファイト・シリーズでは猪木、タイガーの二枚看板の欠場というピンチがありましたが、ホーガンが日本陣営に入り、当時はまだ全国区の人気者であったブッチャーが参戦していたこともあって、シリーズを乗り切ることができました。

しかし、今回の外国人は、アドリアン・アドニスは初来日で実力は未知数、マードック、グレッグ・バレンタインは実力者ではありますが、一般層への知名度や人気は今ひとつ、日本陣営も藤波がエースとして奮闘していましたが猪木に比べるとまだまだというのが現実で、最終戦でボブ・バックランドの来日も決定はしていましたが、観客動員に苦戦が懸念されていたということです。

ここでタイガーがキッドに引き分けるよりも、敢えて負けることで「タイガー、タイトル防衛に赤信号!」「今度こそタイガーがキッドの軍門に下るのか!?」と最終戦を盛り上げるためのマッチメークだったと言われています。